書店で働いていると、
毎日のように「書き留めておきたいな」と思う瞬間があります。
このつぶやきはその中の、ほんのひとつ。
私は残念ながら、脳のメモリー容量が小さめらしい。
だからエプロンのポケットには、右にも左にもメモ帳とペンを常備。
すぐ書き取れるようにしています。
なんせ店内にいると、数分に一度くらいの割合で、実にさまざまなお問い合わせを受けるのです。
トイレの場所にはじまり、観光地への行き方から、なぜ今日は混んでいるのか、ハガキは今いくらの切手を貼ればいいのか、などなど。
そんな中で一番多いのは、本の在庫確認です(そりゃそうだ)。
新聞の切り抜きや手書きメモを手に、聞いてくれる方。
覚えが悪い私には、これはとってもありがたいです。
最近は、携帯で画像を見せてくれる人も多くいらっしゃいます。
でも一番面白いことになるのは、欲しい本を記憶だけを頼りに伝えてくださるとき。
たとえば、ある男性。
「『人生気合いで十分』という本、ありますか?」
「はい、検索してまいります」
担当の児童書なら、検索せず見つけられることも多いのですが、他のジャンルだと、そうもいきません。
まずは、お店のパソコンを使って調べます。
ところが、いくら探してもありません。
残念ながら、お店で使っている検索システムはあまりお利口さんじゃないのです。
ひと文字違うと、ヒットしてくれない。
そんなときは、ネットで検索。
それでも出てきません。
うーん、なんだろう。
「お客さま、出版社や著者など、ほかに覚えていらっしゃることありませんか?」
と聞くと、「すごくよく売れている本」とのこと。
ん?もしかして…と差し出すと、
「そう、これこれ!」
『人生気分が10割』という書籍でした。
確かに似てるけれど、だいぶ違う!
お客さまとふたり、店内で笑ってしまいました。
タイトルも、著者名も、雰囲気で覚えてる。
あるあるです。
書店員ですが、私もふわっと覚えている本なんて山のようにあります。
だって本は売るほどありますから。
児童書ではエリック・カールの『はらぺこあおむし』。
「あの、昔からあるイモムシの…」という問い合わせがダントツです。
美智子さまの思い出の絵本『でんでんむしのかなしみ』のお問合せは、こんな感じ。
「皇室の方の愛読書で、カタツムリなんとか、ある?」
……惜しい。とても惜しい。
うん、だいたい合ってます。
書店員にとって、こんなことは日常茶飯事です。
いいんです。
ちゃんと覚えていなくたって、
少し違っていたって。
「表紙は虎の絵で、昨日新聞に載ってたやつ」なんて言われて、ハッと思い当たる。
すぐ売り場に走って、「はい、こちらですね」と手渡せたとき。
当たり前のように振る舞っていますが、少しはひよっこ書店員を脱出できたかなと、実は小躍りしているのですから。
ちなみに、在庫確認のときに、こんな情報があると見つかるまでが少し早くなります。

・ISBNコード:書籍を1冊ずつ識別するための13桁の固有番号
(雑誌は雑誌コードまたは定期刊行物JANコード)
・タイトル
・出版社
・著者名
・価格(文庫か単行本かの区別がつきやすい)
今日も書店では、こんなやりとりが繰り返されています。
ふらっと書店にお越しくださいませ。
