「絵童話」ということばを耳にしたのは、児童書担当になってすぐのことだった。

絵童話(えどうわ)
- 意味:絵本と幼年童話のあいだに位置するジャンルの呼び名
- 補足:幼年童話との境界線はあいまい。
- 用例:「ひとり読みにぴったりな絵童話」/「絵本の次は絵童話だね」
- ひとこと:「絵童話」と名前がついたことに静かに興奮している。浸透してほしい!
「絵童話」との出会い
しおたにまみこさんの『たまごのはなし』(ブロンズ新社)の発売前、営業の方がすごい熱量で書店にやってきた。
プルーフ(発売前の見本)を持って。
「絵童話」という言葉との出会いは、この時だ。
(この絵本の素晴らしさについては、別記事でたっぷりと。)
絵もたくさん。読み切りやすい長さのお話が3つ。
絵本とも、挿絵のある読み物とも違う、絶妙なバランス感。新鮮なのに、どこか懐かしかった。
『たまごのはなし』の発売以来、この言葉を耳にする機会がぐっと増えた。
新刊案内や絵本の紹介文、書店員同士の会話でも、自然と使われるようになってきている。
理由は二つ。このジャンルに当てはまる作品が増えてきたこと。
そして、『絵童話』が児童書界でとても重要な役割を持つからだ。
絵もたくさん、物語もしっかりのちょうどよさ
「絵童話」——その立ち位置は、絵本と幼年童話のあいだ、といったところだ。
絵と文章のボリューム感で捉えると、わかりやすい。
絵がメインの絵本からステップアップしていくと、徐々に文章が増え、絵のボリュームが減っていく。
児童読物になると挿絵だけ、もしくは文章のみになる。

ちょうど絵と文章のボリュームが同じくらいに近づくライン。
このあたりが「絵童話」の居場所だ。
私の勤める書店では、まだ正式な居場所はないので「幼年童話」の棚に置いている。
絵本寄りの童話。
サイズ感としてはA5サイズあたり。絵本より小さめだ。
つまり、「絵童話」と「幼年童話」の境界線はあいまいだし、いまのところジャンルとして、はっきり確立されているわけではない。
にもかかわらず近年、「絵童話』と呼ばれる作品が次々と生まれている。しかもそのどれもが、これからずっと絵本界に残っていくであろう名作ばかりだ。
そのおもしろさったらない。
そして、その存在意義も唯一無二だ。
大人に読んでもらう絵本から一歩飛び出し、自分で読むという新しい読書体験へと移行する時期。
小さな頃から読書好きだった私は、「自分で選んで、自分で本が読める」ことがやたら嬉しく、図書館や書店での時間を満喫。読める本が増え、読書の楽しみが加速していった頃だった。
一方、読むことが苦手な子どもにとっては、少し危うい時期だと、書店員になった今は思う。
「うちの子、あまり読むのが得意じゃないんだけど、お話を読んでほしくて」と、お子さまに手渡す本を探し求めるお客様からの相談は多い。
加えて、年齢的に絵本ではないものをプレゼントしたいという要望も。
絵本から急に文字の多い童話を手にしたら、戸惑う小さな読者がいるかもしれない。
「難しいな」「文字が多いな」と感じたら、その思いがけない段差で、つまずいてしまうかもしれない。
絵本を楽しんでくれたなら、その先の読書の世界も知ってほしい。

文字ばっかり…



いえいえ、ちょうどいい本があるんだよー
そんな子どもたちの、頼もしい相棒となるのが「絵童話」だ。
「絵本の一歩先、童話の一歩手前」
絵から受け取れる楽しさもたっぷり。
けれど、物語の面白さもじっくり味わえる。
このちょうどよいバランスが、「絵童話」の魅力だ。
絵本と幼年童話のあいだをゆるやかにつなぐ、スモールステップの役割を担う。


「自分で本が読めた!」
その達成感は、きっと本を好きになる大きなきっかけとなる。
つまずきやすい時期に、そっと手を差し伸べてくれる「絵童話」。
この呼び名も、もっと広がっていってほしい。
その先に待っている豊かな読書の世界へ、たくさんの子どもたちを連れていってくれるはずだ。
「絵童話」は子どもだけのものではない。
絵も楽しめる。
物語もたっぷり味わえる。
絵と物語のあいだにある余白もたまらない。
そんな“大人に読んでほしい絵童話”の作品紹介は、こちら。


